恩師を訪ねて~古英語の海原に舟を編む~

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驚きが潜んでいた、憂鬱なクラス

村山: 私たちは英語の歴史が必修で、3クラスある中、私のクラスだけ何故か小島先生で。あとの2クラスは違う先生が英語の歴史をやっていたんですよ。

小島: ということは、一番辛いクラスになっちゃったんだね。

村山: そうそう(笑)。
それまで高校でやっていた英語とか受験でやってた英語とは全然違っていて。尚且つ大学の先生ってもっとおじいさんが出てくるのかなって思っていたら随分若い先生で。

ある時、先生が授業の例え話で「ディープ・パープルのスモーク・オン・ザ・ウォーターだ。」ということを仰ったんですよね。イギリスのロックグループのとても有名な曲で、すごくかっこいい曲なんだけど、それでびっくりして。「大学の先生でもロック聴くんだ」って思って。
今だったら大人になれば大学の先生だって居酒屋に行くし、ロックを聴くというのはわかるんだけど、その時は田舎の高校から来たばっかりだから、それでまずびっくりみたいな。

小島: 僕はほんとにロック小僧だったから。
音楽の興味は中学校からだったけれど、高校からはバンドに誘われて、ディスコの専属契約とってやったりもしていたしね。

村山: 異色の先生でしたね。ただ授業はめちゃくちゃ厳しかった。ほんと厳しくて。今だから言うけど、それこそ憂鬱な授業でした(笑)。
二年目も私たちのクラスだけ英語の作文の先生が小島先生。

小島: なんか大変だったね。

村山: 大変でしたよ(笑)。
でも、三年になってゼミを選ぶ時、丁度その時、先生もはじめて自分のゼミを持たれる年で。ゼミの案内が配られる前に、小島先生のゼミがあったら私は行くって友達に宣言してました。宣言してたんだけど、後で先生に「なんで君が僕のゼミに来たのかわからない」って言われた(笑)そもそも村山ってどんなんだっけ?っていう感じですもんね、その時は。

写真:驚きが潜んでいた、憂鬱なクラス

小島: そうそう(笑)あの年は人数も多かったしね。

村山: 十数人?

小島: 14、15人いたよね。

村山: 先生も「そんなに学生が来るとは思ってなくてびっくり」っていう(笑)。
その時は古英語も知らないし、ゼミの内容も知らなくて、小島ゼミがあるかないかも知らないのに、なぜ小島ゼミに行くと決めていたのかはわからない。先生もなんでこいつが来たかはわからない(笑)。
しかも大変なゼミで。一回だけ逃げたことがある(笑)。

ゼミは必修だし、厳しいし、休んじゃいけないというのはもちろんわかっているんだけど、前の日の23時くらいにゼミ仲間と電話していて「明日の授業、予習がまだ終わってない。どうしよう」「逃げちゃおうか」ってなって(笑)

小島: 懐かしい話だね。

村山: 昔は今みたいに携帯電話とかインターネットとか無いから、先生にメールで「明日休みます」とか伝えられない。もちろん夜中に電話はかけられない。かと言って無断で休むなんて絶対できない。結局先生のご自宅のドアのところに「思うところあって本日は休ませていただきます」って貼り紙してゼミ生3人で逃げちゃった(笑)。

小島: そう。朝出かけようと思ったらなんか貼ってあるなと思って(笑)。

村山: そのまま福島方面に車で逃げまして(笑)。福島の温泉に一泊。それから、先生のところにお詫びの日本酒を買って帰って来ました。

小島: なんかそんなようなことが新潟から帰って来る時もあったよね?

村山: それもまたゼミ仲間たちとお盆で新潟に帰って、それこそ携帯電話がないから東京に戻ってくる途中のPAで電話入れて、夜中の2時くらいにそーっと先生の勉強部屋の窓コンコンってノックしたら入れてもらえて、そのままお宅にお邪魔して朝まで飲んでましたね(笑)。

小島: よくうち泊まっていたね。学生時代だけじゃなくて、就職してからも。

村山: そうそう。ゆうさん(先生の奥さま)のスカートお借りして、そのまま出社みたいな(笑)。

小島: そうそう。ちょうど体型がね、同じくらいで。

村山: 学生の頃はほんと先生とゼミメンバーでまず居酒屋さんに飲みに行って、二件目は沼袋のスナックに歌いに行って、そのまま先生の家に行って朝まで飲んで、空が明るくなってきて、先生が眠くなったら帰る、みたいな(笑)。
ゆうさんもいつも一緒に迎えてくださって一緒に飲んで。

小島: あれから未だに、うちの女房(後述:ゆうこさん)もみきちゃんたちとの飲み会の時に必ず一緒だね。

写真:学生時代の思い出

村山: 旅行も毎年一緒に行っているし、三か月に一回くらいは一緒に飲んでいますね。なんですかね?なんていうか、古英語の知らない世界もすごく面白かったんだけど、それよりも先生の魅力っていうか。なんか知らないものに出会ったっていうか。授業はもちろんだけど、お宅にお邪魔していろんな話を聞いて。

小島: 僕は酔っぱらうとね、途中で記憶がなくなっちゃうんだけど理路整然と延々喋るらしいんだ(笑)

村山: ものすごく語られるんですけど(笑)やっぱりそれはすごく新鮮で。歳が先生と14歳違うのかな?

小島: うん、そんなもんだね。

村山: やっぱり知らないことをすごくいっぱい教えてもらって。それがめちゃくちゃ…今にして思うと青春って感じですよね(笑)

小島: ああ、うん(笑)

村山: そのお付き合いが大学出て30年近く続くなんて夢にも思わないですよね。

小島: うん、思わなかった(笑)

村山: それがやっぱり大学の先生、ゼミでそういうことに出会えたって、ものすごく幸運なことですね。多分周りに聞いてもそんな人はあんまり聞いたことはない。

小島: あまりいないだろ(笑)普通はね、敬遠するの、先生ってのは。大体先生って煙ったいほうが多いと思うので。

村山: そうですよねえ。

小島: 最初は煙ったかったでしょ?

村山: 煙ったいっていうより怖かった(笑)「うわぁ~…」みたいな(笑)

小島: 今でもあの態度はね、貫いてる。

村山: チョーク投げちゃう?(笑)

小島: 最近はね、投げるとうるさいから投げないんだよ(笑)

写真:学生時代の思い出

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