ビジネススキルとしてのデザイン

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ビジネスとしてのデザイン


ビジネスシーンで今キーワードとなっている「デザイン思考」。
しかし、この言葉を正確に理解している人は多くないのではないだろうか。

なぜ、ビジネスとデザインが関わるのか。
デザイナーが行なうデザインのプロセスとはどのようなものなのか。
デザイン・アートとビジネスという一見異なる領域を自在に横断し、「芸術文化と社会をつなげる」ことをビジネスとして成立させた株式会社OFFICE HALO。

代表取締役社長の稲葉裕美さんに、社会人向けアート・デザインスクールの事業展開、アート・デザイン×ビジネスの可能性についてお話を伺った。

稲葉 裕美
稲葉 裕美
株式会社OFFICE HALO
代表取締役
株式会社OFFICE HALO:
http://art-corner.jp/
WEデザインスクール:
http://wedesignschool.com/

-Profile-
1984年生まれ。武蔵野美術大学 芸術文化学科卒業。在学中にアートマネジメントやデザインマネジメント、文化政策を学ぶ。2014年に美大出身メンバーと芸術文化教育の研究開発を目的とした株式会社 OFFICE HALOをスタート。同社代表取締役。2015年に社会人向けアートスクール「CORNER」を開校。2017年11月に「WEデザインスクール」を開校。大学や企業などにアート・デザイン教育プログラムの提供を行うなど、専門知識をより広く伝える活動を行う。

松尾 力
松尾 力
水上印刷株式会社
HP:http://www.mic-p.com/

-Profile-
大学卒業後、経済産業省に入省。中小企業政策や福島復興政策、対ASEAN通商政策などに携わった後、2014年に水上印刷株式会社へ入社。
採用担当などを経て、現在は大手外食チェーンの営業を担当する傍ら、社内の新規事業開発会議、ビジネス・イノベーション・ブレインストーミング(通称:BIB)を主催し、既存の価値と、新しい価値の融合による新規事業の立ち上げを牽引する。“情熱は世界をより素晴らしいものにできる”をテーマに情熱人にスポットをあてたDigital Magazine「The PASSION」の共同編集長を務める。


アートをカジュアルに学べるアートスクール「CORNER」

松尾:デジタルマガジン「The PASSION」では、ジャンルを問わず、情熱的に自らのミッションに取り組んでいる方のお話を発信していまして。それで、情熱と言ったらパッと稲葉さんのことが思い浮かんだので、今日こうして伺いました(笑)。

稲葉:ありがとうございます、思い出していただいて(笑)。熱量だけは誰にも負けないので。

松尾:僕が稲葉さんと出会ったのがアートスクール「CORNER」なのですが、まず稲葉さんがされている事業内容についてお教え頂けますか。

稲葉:私が現在経営している株式会社OFFICE HALOは2014年に立ち上げました。
OFFICE HALOでは「芸術文化と社会をつなげる」ということを理念として掲げ、それを指針に芸術文化、つまりアートやデザインを社会に普及させていくことを目的としています。

最終的には、生活における芸術文化性をいかに回復していくことができるか、そして芸術文化を通した幸福度向上に貢献する、というのが会社として追求していることですね。

アートをカジュアルに学べるアートスクール「CORNER」

アートは若い人にこそ知って欲しい

稲葉:その1つ目の事業として社会人向けのアートスクールをスタートしました。今までアートというと漠然と「感じるもの」のように捉えられてきたと思うんです。

松尾:センスがある、センスがない、というように。

稲葉:そう。そんなふうに誤解されてきたので「アートは自分には分からない、縁遠いもの」だと思って、諦めてしまう人が多かったんじゃないかなと思うんです。

でも、アートだって学べばわかるものです。

作品の背景や、作者がどういう意図で作ったかということを知れば、アートはある程度分かってくるもの。もちろんそれを踏まえて感じるということはありますが、情報として、背景や意図を知った上で見ていくという方法もあるんです。

初心者だけどアートを知りたいという人には、知識が良いガイドになる。アートに対する1つの正しい触れ方だと思います。美術大学でもそういう理論や背景を言葉で共有しています。でも一般的には広がっていないので、何となく「センスではないのか」と誤解している方が多いんです。

松尾:そうですよね。アートが好きだなと思ったら、専門的な勉強をしていなくても、純粋に好きなものとして追求してもいいですよね。

稲葉:特に今、若い社会人はアートに触れる機会が少ない。アートというと、定年退職後のお年寄りが、水彩画を道端で描いているようなイメージになってしまう(笑)。

松尾:ありますね(笑)。年を取ったらやるものかな、というイメージが。

稲葉:でも本当は、アートは若い人にこそ知って欲しい。若い人がこれから自分はどういう生き方をしていくのか、何に価値を見出して人生を決めるのか、何を幸福と定めるのか、そういうことを考える時にアートが参考になるんです。

アートは人間の精神を深く、いろんな角度から扱っているものなので、自分の生き方や幸福のあり方を見つける手がかりにして欲しいんです。

それをなるべくわかりやすくお伝えする、カジュアルに行きやすい場所として存在させる、今までにない方法でアートを提供したい、というのが「CORNER」を始めたきっかけです。

松尾:それに見事にビビッと来ちゃったのが僕です(笑)。

稲葉:いろいろ分野に詳しくて勉強熱心なんだけど、アートに関しては全く知らないという人が意外と多いんですね。なぜかというと学べる機会がないし、学びたくても行く場所がない。
だからカジュアルに学べる、というのは大事なんです。

アートは若い人にこそ知って欲しい

稲葉 裕美

稲葉 裕美
株式会社OFFICE HALO 代表取締役
1984年生まれ。武蔵野美術大学 芸術文化学科卒業。在学中にアートマネジメントやデザインマネジメント、文化政策を学ぶ。2014年に美大出身メンバーと芸術文化教育の研究開発を目的とした株式会社 OFFICE HALOをスタート。同社代表取締役。2015年に社会人向けアートスクール「CORNER」を開校。2017年11月に「WEデザインスクール」を開校。大学や企業などにアート・デザイン教育プログラムの提供を行うなど、専門知識をより広く伝える活動を行う。

ビジネスの力でアートを身近な存在に

稲葉:アートはハードルが高いねとよく言われるんですけど、ハードルを高くしている要因は色々あります。例えば、多くの美術館は夜遅くまで開いてない。そんな単純な当たり前のこともやっぱり壁になっていたりはしますよね。

なんとなくとか、仕方なくとか、そうやって捨て置かれているものについて、顧客ニーズを考えながらひとつひとつ丁寧に解消していけば、もっとアートは近いものになっていくことができると思っています。それがビジネスとして展開する意味かなと思っています。

松尾:「CORNER」も、若い人が来たいと思える雰囲気にこだわったと言っていましたよね。

稲葉:アートはどうしても難しそうとか、自分には無理かも、なんて感じさせる点があると思うんですよ。CORNERでこだわったのは、そんなハードル感を出来る限りなくして、色んな意味でとにかくアクセスの良い状況を作り出すということでした。

松尾:確かに、CORNERには、気軽に行ってみようと思わせるものがありますよね。

稲葉:私たちがまずこだわったのが、入門型の講座、最初の一歩目にできる講座ばかりを取り揃えるということです。美術館や行政が運営しているアート施設なんかでも、教育プログラムは行われているんですが、どうしてもそのときの展覧会にあわせた企画になるので、アートビギナー向けの入門授業が常におこなわれているわけではないんです。

松尾:なるほど。

稲葉:そしてもちろんデザインや伝え方にもとてもこだわりました。ポップで若い人にも親しみやすいイラストをブランドの顔として使ったり、女性が多く集まりがちなアートの場に男性もぜひ来てほしいという思いから、中性的な色をメインカラーに使い、カルチャー雑誌のようにわくわくするようなデザインにするなどの工夫をしています。届けたい層に欲しいものをより届きやすい形で届けるという、ビジネス的に言えば当たり前のことを一つずつ丁寧にやりました。

ノンデザイナーにデザインを WEデザインスクール

稲葉:会社の理念である「芸術文化を生活者に届ける」ためには今、デザインが必要なのではないかと感じて次に始めたのが「WEデザインスクール」です。

特に若い社会人にとっては、生活や仕事の上で喫緊の課題として切望されているのが、デザインです。

「CORNER」に来られた方は色んなことを吸収し、よく学ばれた上で、アートにたどりついたという人が多かった。でも、そこまでたどりついていない人にも芸術文化への間口を広げたい。「WEデザインスクール」を考えたきっかけはそこでした。

松尾:「WEデザインスクール」というのは、どういうところですか。

稲葉:「WEデザインスクール」は、ノンデザイナーの社会人向けにデザイン教育をする場所です。
デザインをビジネスに活用することを前提に、デザイナーではない人がデザイナーと協業しながら、良いデザインの判断者や活用者になっていく。そういう人を応援する場所にしたいと思っています。

美術大学ではない一般の大学を出ている人たちは、アートやデザインに触れる機会がほとんどないんですよね。

松尾:ないですね。

稲葉:どんなに知りたくても知る機会がない。優秀で何でもできるビジネスマンでも、デザインに関しては、知識が足りない人が多いんですよね。

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