AIとビッグデータが創造する未来ビジネス

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AIとビッグデータが創造する未来ビジネス


「AI」や「ビッグデータ」という言葉が世の中に広まる前から、この技術が秘める可能性に目を付け、ビジネス開発を行ってきた会社がある。データセクション株式会社、2014年に上場を果たし、ますます注目を集める気鋭のベンチャー企業だ。その中でも、新規事業開発部門において、「Inspire the Next Datasection」を掲げて邁進する若手経営者が居る。
流行言葉の役割を終えたAIとビッグデータは、今どれだけ活用されているのか? そして、今後のビジネスにおいてどのように展開されていくのか? 人工知能が人に取って代わる未来はやってくるのか?
AIとビッグデータ、その業界の中心人物から見た未来のビジネスについて語ってもらった。

林 健人
林 健人
データセクション株式会社
取締役兼COO
HP:http://www.data
section.co.jp/

-Profile-
2002年、早稲田大学商学部経営コースを経て、大手外資系コンサルティング会社に入社。CRMソリューションにおけるコンサルタントとして従事。大手自動車メーカーやコンビニエンス企業、百貨店企業等へ、CRM戦略を始め様々な領域におけるビジネスプロセスの改革を実施。2007年、大手事業投資会社へ 入社し、企業のビジネスプラン作成による資金調達・事業開発から、新規サービスの立ち上げ、グループ会社へのM&A等を実行すると共に、SNS分野での新規事業開発を行う。大手事業投資会社時代にデータセクションと共同でSNSを活用した事業・サービスを開発した経緯から2009年、データセクション株式会社取締役COOに就任。
河合 克也
河合 克也
水上印刷株式会社
代表取締役社長HP:http://www.mic-p.com/

-Profile-
2002年、早稲田大学商学部を卒業後、大手FA電機機器メーカーに入社。2007年より水上印刷の経営戦略に参画し、経済産業省商務情報政策局情報政策課への転籍を経験した後、2014年に代表取締役社長に就任。
「製造とサービスの融合」を核にビジネスモデルとして掲げ、その基礎となる「ひとづくり」を経営の中心に据える。「お客様の面倒くさいをすべて引き受ける」をコンセプトに、マーケティング、クリエイティブ、ものづくり、 フルフィルメント、ロジスティクス、ICTを自社で一貫して保有し、小売流通企業の販促プロセスにイノベーションを起こしている。
2013年「おもてなし経営企業50選」、2014年「グローバルニッチトップ企業100選」を受賞。
“情熱は世界をより素晴らしいものにできる”をテーマに情熱人にスポットをあてたDigital Magazine「The PASSION」の共同編集長を務める。

AI・ビッグデータのビジネス専門家に聞く

河合: 久しぶりだね。
気心知れた相手だから、今日は楽だわ(笑)。

林: そうだね。

河合: 今日のテーマなんだけど、ずっと私自身興味を持っている分野がAIとビッグデータ。テクノロジーに関してもだけど、これらがどう世の中を変えていくのかなって。
例えば、ビッグデータという言葉は、言葉そのものの流行りはすでに終えた感があって、実際にどういう風に社会に定着していくのかというフェーズ。何でもかんでもビッグデータではなく、課題や実際が見えてきていると思うんだよね。
ユーザー視点でのAIはまだまだ妄想段階のものも多く、リアル社会への普及のスピード感なんかは見えてこないところもある。
この辺いろいろ考えるんだけど、ふと思い出すと、健人、ごめん林さんに聞くのが一番面白いなって。

林: なるほどね。確かに、弊社が一番力を入れている分野だね。

河合: だよね(笑)。

林: 了解。少し遠回りにいろんな事例の話をするね。

河合: お願いします。

クラウドサービスの実態は「労働集約×マッチングサービス」

林: 例えば、クラウド型のサービス。いろんなサービスやアプリが生まれてきているけど、世の中のほとんどのクラウドサービスって、実はまだ結構「労働集約型」なんだよね。

河合: というと?

林: 昨今、いろいろ面白い会社があって、例えば、スマホで皮膚疾患の写真を撮って、クラウドに上げると、手が空いている皮膚科の病院の先生たちが診断してくれる、なんてアプリがある。画像をアップしてから、12時間以内に診断しますよっていうことをユーザーにコミットしていて、平均診察時間は実際1時間以内なんだよね。

河合: 1時間しないんだ?すごいね。オレ、病院で待つのが大嫌いだから助かる(笑)。

林: 結構すごいよね。でもこのサービス、クラウドの向こうにいる誰かが、1時間以内に応えてくれるっていう、要はマッチングサービスとも言えるんだよね。

河合: なるほど。その時に手が空いている先生が、その写真を見て診断するってことだもんね。ネットによってそれをマッチングしているということだね。

林: その通り。そしてこれからユーザーが増えてきたりすると、難しくなってくるだろうね。労働集約的にビジネスを拡大していくと、いずれ限界が来て、絶対に1時間とかじゃ間に合わなくなってくるよね。

河合: そうだね。

林: そうした時に、例えば皮膚診断だったら、写真とかでも分かりやすいじゃない? ある程度の画像パターンを、あらかじめコンピューターに習熟させておけば、自動で診断の回答をできるようになる。ここに画像認識の技術が生きてくるよね。

河合: つまりディープラーニング(Deep Learning)によって、画像認識が可能になったコンピューターが、皮膚科の先生の代替をするわけだ。

林: そう。100%でなくても、ある程度のスクリーニングをしてあげることができれば、皮膚科の先生も楽だし、サービスのレベルを落とさずに済むし、もっともっといろんな人達のことを助けてあげることができるかもしれないよね。

河合: ヘルスケア×AIの一例だね。

林: 他にも、受験生と家庭教師をつなぐアプリなんかがある。これなんかもすごい面白いんだけど、まず家庭教師のサービスを想像してみて。家庭教師って、大学生なんかをアルバイトでプライベートレッスンの先生として雇って、自宅に訪問して、勉強教えてあげるわけだけど、これを組織化して提供しているサービスなんかはすでにあるよね?

河合: CMやってるとことかね。

林: そうそう。でも、受験生からすると実は一番先生がいてほしい時間って、夜遅く自習をしている時だったりするんだよね。ふと自分じゃ解けない問題にあたって、その時こそ一番質問したいのに、その時間には先生がいないわけ。そこで、問題をスマホで撮って、アプリにアップする。そうすると手が空いている家庭教師が、この問題はこう解いたらいいんだよってことを教えてくれる。
これも結局は、ニーズのある受験生に対して、欲しいタイミングに欲しいサービスをマッチングして提供してあげるっていうことだよね。

河合: 欲しいタイミングで、欲しいサービスの提供。ビジネスの基本でもあるね。

林: こういうのも、もっともっと受験生とか、先生のネットワークが広がっていった時に、どの種類の質問や問題を、どの先生に投げるかっていうのが、回答時間の肝になってくるじゃない? こういうケースは、すぐに回答できる得意分野の先生を一次スクリーニングしてマッチングするところに、ディープラーニングやAIが生きる可能性がある。まずテスト問題をラーニングさせた画像認識システムでパターン分けして、あらかじめ保有する先生のプロフィールとのマッチングを、自動でAI技術で行う。より正確で、分かりやすい回答を、短時間で受験生に提供できる。

河合: 教育×AIだね。

写真:AI・ビッグデータのビジネス専門家に聞く

医療、教育、そして農業分野にも

林: こういう事例っていっぱいあるんだよね。海外にも目を向けると、東南アジアで農業支援の事業をやっている日本企業の事例なんだけど、東南アジアでは一次産業の農業って主力産業なのに、日本で言うところの農協みたいなものがなくて、例えばニンジンとか作っても流通を肩代わりしてくれる機能がなくて売れないわけ。もちろん農家に対する融資機能なんかも充実していないから、全然売れない作物ばっかり作っていて、収穫までのつなぎ資金を変な高利貸しから借りちゃって、結局作物も売れないからお金返せなくて、破綻しちゃう農家とか多いんだよ。ここの会社がやっているサービスもスマホのアプリ。いくつかの東南アジアの国って、スマホの普及率が日本よりも高いんだよね。日本人よりスマホ持っている。

河合: ガラケー飛び越えてスマホに行ってるんだ。

林: 農家がこのサービスのアプリをダウンロードして、GPSをONにしたまま自分の畑の周りを一周する。そうすると、その畑の位置情報がクラウドにアップされる。天気、土壌、気温、他にはマーケットのデータとか、そういう情報が後ろでクラウドに上がっていて、畑の位置情報に合わせて作付けのアドバイスをしてくれる。

河合: ビッグデータとの連動のモデルだね。

林: この土壌だったら、ニンジン作るよりも、今市場ではタマネギのほうが高く取り引きされているからタマネギを作ったほうがいいですよ、とかね。作物を育てていく過程でも、アドバイスを返してくれるんだけど、変な虫に食われたり、病原菌がついたりしていると、この画像を撮ってアプリにアップする。そうすると日本の農業大学と提携していて、○○病だから、こういう対処をしてくださいというアドバイスがもらえる。農業経営の支援をしてくれるアプリなのね。
それから、このアプリがすごいのは、東南アジアの銀行と組んでいて、アプリから取得できる経営データをベースに、その農家に対して与信の審査をして、ローンを提供してあげる仕組みまでつくっているところなんだよね。

河合: いたれりつくせりだ。どっちが経営者なのかわかんないね(笑)。

林: 弊社データセクションとしては、創業来取り組んできた情報基盤(Big Data)と、近年力を入れている分析技術(ディープラーニング/AI)を組み合わせて、あらゆる産業に入り込んでいきたいんだよね。自分たちだけでいきなり農業×ITの事業を立ち上げようと思っても、その道の素人には簡単にはできないでしょ? こういういろんな会社と提携していくことによって、いろんな事業のボックスを増やしていこうって進めているとこ。

河合: データセクションのビジョン「未来のビジネスをAIとデータで創造する」だね。
AIもデータもあらゆる企業、サービスにおいて知的インフラになる予感は間違いないよね。データセクションのCOO、その分野のプレーヤーとして考えている経営課題みたいなことはあるの?

写真:医療、教育、そして農業分野にも

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