まちづくりは“耕す”ことから
河合: 最後に、なにか黒田さんが問題意識を持っているテーマ、そんなものがあったら少しそれを聞かせてください。
黒田: そうですね、個人的には大きく2つあります。
1つ目なんですけど、今すごい都内でも開発が進んでいるじゃないですか。そして極端なことを言うと、今エクセルで建物は計画できてしまうんですよね。敷地面積から、建ぺい率と容積率で、それに対して何%位が建物になるかを一番取りやすい四角形で考えて、「商業スペースは2階、3階くらい?」みたいな話をする。
仕組み自体が、高度成長期時代の考え方で作られているので。そこを変えていきたいなと思っています。本来建物の価値というのは、エクセルの数字に表れてこない価値をどう創るかっていうところが重要じゃないかと思っていて、同じ四角が並ぶ街並み、同じ四角が並ぶフロアって面白くないですよね?そこを今は問題意識として持っています。
例えば、オフィスビルだとエレベーターとかトイレとか共用部があって、貸せる面積を最大化することがデベロッパーの目的なんですけど。賃貸スペースはテナントさんが自由に色々作ったりするとしても、共用スペースのほうは質が低かったりする。テナントさんによっては中にカフェ作ったりだとか、会議室を無駄に作ったりだとかするものを、もっと共用部に寄せて、そこで特徴をつくっていく方が、実は利用面積は変わらなくて、賃料単価も上がることもあるのではないか。
建物の個性を出して差別化ができないと、建物を建てた際に、単純に駅に近いビルのほうから埋まっていくことになってしまいますよね?
河合: おっしゃる通りです。
黒田: 2つ目は、建物ができていくにあたってずっと考えていることですね。
「カルチャー」って言葉の語源が「カルティベート」、つまり「耕す」っていう意味なんですけど、耕すようなことをまちづくりでもしていきたいんですよね。いきなり渇いた土地に木をガッと埋めても枯れちゃうから周りの土地を潤さなきゃいけない。土壌を良くして、それによってちっちゃい生物も住むようになれば、木を植えても枯れずに育っていくし、周りの環境も良くなっていく。そういう数字とかお金とかだけじゃない、もっと情緒的なものを入れて行かないとこれからはダメなんじゃないだろうか、と考えていますね。
河合: UDSが、まさにそういうことを手掛けるコーディネイターでありたいと?
黒田: そうですね。それから、僕が今感じている会社の課題としては、「CLASKA」もコーポラティブハウスもキッザニアも、社会にものすごいインパクトを与えているんですけど、すべて2008年以前のものなんです。だから、僕らの時代にもう一度、こういう社会にインパクトを与えるプロジェクトを手掛けたいですね。
河合: なるほど。
では最後に、御社を一言で表現すると何業、何会社って考えてますか?
黒田: 企画・設計・運営会社です(笑)
河合: まぁそういうことですよね。
黒田: あと大事にしたいのは、「デザイン性」だけでなく、「事業性」「社会性」のバランスをとっていくこと。
河合: いやでも非常に面白いですね。きっとまちづくりに限らずですけど、昨今はいろんなものの境目が従来と変わってきています。既存の関係性が変わって、これから益々社会の在り方が変わってくるんだろうなあと感じているので、御社のように、ある分野に特化して、運営まで一貫で手掛けていくモデルは、これからの大きな方向性の一つだと思います。
黒田: それだけビジネスチャンスがあると思うので。
河合: そうでしょうね。そんなところをすごく感じました。
改めて、黒田さん本日はありがとうございました。
黒田: こちらこそ、ありがとうございました。