外国人新入社員に聞く「なぜ今、日本の会社で働く道を選んだのか?」

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より多くの外国人高度人材が日本企業を目指すためにどんな企業対応が必要か?

金: どう思いますか?

房: そうですね、各会社のインフラというものが必要かな、とは思います。例えば英語の出来る社員がある程度いて、もしお互い誤解が生まれた場合、それを解いてくれたりとか。そういうことができる人が必要だと思います。
私は、結構同期達に助けられていますが、最初は私もどこから説明すればよいか、向こうもどこまで理解すればいいか分からなかったんです。やっと私が言う事を「あ、だからこういう風に言うんだ。」とか、理解してもらえるようになりました。

ただ、そもそも外国人が会社を選ぶとき。英語が出来るなら外資系を志望したり、母国に帰えるとか、色んな選択肢の中で迷います。でも、多くの人が考慮するところは、この会社は今後グローバル展開するつもりなのか、もしくはグローバルなマインドを持っているのか、だと思います。それが魅力を感じる要素になると思います。そういうマインドがないと多様性がある人達を受け入れてくれないだろうなと感じてしまうし、コレだったら多国籍企業がいいな、と思うようになるかもしれません。
そういうイメージを払拭した方が外国人からは日本の企業で働くことに魅力を感じるようになると思います。同じアジア圏。中国とか韓国だけではなく、もっと文化の差がある国からも来られるようにしたのであれば、なおさらそういうことが必要かと思います。

金: そうですよね。結構アジアでも国によって文化とか仕事をする上での融通さとか。もう全部違うので。そもそも、日本を中心に考えるのではなく、その国の事情を中心にちょっと考えた方が色々見えてくると思う。
日本中心に考えて、これはこう、正しいでしょ!っていうんだけど。向こうからするとそれは正しいとは言えない、思わないというのもあるので。

房: なんだろう。日本じゃない国ではこれも正しいんだけど、みたいな。(笑)

金: お互いに話し合って合意点を見つけないといけないんですけど。その対応や考え方が出来る会社なら結構外国人でも、もし興味を持ってくれるんだったら面白いかなって思いますね。

房: たまに「これが日本のやり方だよ」と言われると、自分が思ったことをどう伝えればいいかと迷うときがあります。「もしかしたらこういうやり方とか考え方もあるよ」、と。

金: なんていうんですかね。日本独特の文化がありますよね。

房: うんうん。

金: 日本独特の文化も再認識したうえで、外国人社員が持つ能力を発揮できるような環境だといいんだけど。そうじゃない中で、ある時外国人の発想が欲しいよって言われても、あんまりパッと出ないっていうか。

房: そう言ってもな、みたいな感じになるかもしれないです。モロッコからきた友達が日本企業で働いてはいるんですけど、多分ある程度日本のやり方とか考え方に慣れているから入れるのだと思います。
それでも、これが日本のやり方だ、と言われてしまうと外国人社員は悩むと思うんですね。

金: 結構感じますね。同期でも、それは普通に言ったほうがいいよって思うんだけど、「いや…それはねー。」っていうのがあるんですよ。私から見れば、もしこれを上長に言ったら上長も結構嬉しそうに受けてくれるだろうと思うのに、敢えて言わない人も居るんです。早く言ってよ!というのが逆に私を唸らすんですよ。
言ったほうがいいよっていっても、え、これ言ったほうがいいの?って自分が不利益になるんじゃないかって、心配で言わない人が多いんですよね。
やっぱり自分が思っていることは一言でもいいから話したほうがいいんじゃないかなって、思ったときがありますね。

房: 私は以前インターンしていた所が結構特殊で、元々日系企業だったところをスウェーデンの企業が買収して、半日系半外資系みたいになっていました。トラック会社だったので、工場で働く人もいれば、オフィスで働く人もいるような状況でした。国、経歴、職種、全部ばらばらな状態ですね。どうすれば社員同士意思疎通が出来て、意見を統一できるか、というのを凄く考えている企業だったんです。

そこはダイバーシティ&インクルージョン(Diversity&Inclusion)というプログラムを別で作って、それを定期的にセミナーでやるんですよ。多様性を認めて、それを受容して、シナジー効果になるようにがんばろう、みたいな感じの講座を立てやっていました。

日本人の方が多いから、多数決でこれは日本でやっているやり方でやろう、ではなく。外国人と働くのであればそういう認識を変えるところから始まるんじゃないかなと思います。
うちの社内の人も最初私にどう接すればいいか分からない方が多かったと思いますし。
金さんはどうでした?

金: 私は同期からあんまり韓国人としては見られていない、というか。私がラインで韓国語を打っていると、ああお前そうだったよね、みたいに言われます。(笑)
逆に考えると、そう思ってくれると。あー、自分もこの生活に慣れてきたなっていうのは感じるんですけど。でも、んー…やっぱりそういう気遣いをしてくれるからありがたいなっていうのはありますね。

房: そうですね。同期に色々相談したりとか、こういう時どうすればいいの?とか。結構聞くんですけど。都度いってくれるというか、ちゃんと話してくれるところがありがたいと思いますね。

写真:日本企業に求める企業対応

今後、どのようなキャリアを思い描いているか?/10年後の自分はどういう姿か?

金: 40、50代になってやりたい事でも、10年後でも。やりたいことってありますかね?

房: 日本には居ないかもしれません。

金: ああ、私もです。

房: 同じですね。私の場合は日本にそこまで拘っていないのでどこでも大丈夫みたいな感覚です。でも、20代は日本に居るかな、と思います。
でも、やっぱり今の業界にずっと居たいとは思います。
とはいっても、まだ20代でやってみたいことは色々あるので。例えば、大学院行きたいとか、30歳になる前にワーキングホリデー行きたいとか。自分の状況がどうなるかによって、選べる選択肢も変わってくるかなと思います。

金: 私は10年ぐらいばりばり働いているなって思います。夢としては、日本で働きながら韓国の関わりのある仕事をやりたいです。今、会社では国内を中心に仕事をやっているんですけど、もしチャンスがあれば、どういう形でも良いので韓国とのやり取りがあったらいいなって想いがありますね。
自分が居たからこういう仕事が出来たんだよというのは、達成感にも繋がるし、それ以上にまた、他の国でも他の先輩方と一緒に世界に向けて何か出来たら、違った面での達成感もあるので。今は仕事を覚えることが多いですけど、慣れてきたらなんとかして海外に目を向けることが出来たらいいなって思いますね。

その後はあんまり考えてないですね。(笑)

房: そうですね。私も韓国企業と関わる仕事に携わりたいという想いがあります。
折角なら自分の特性というか、強いところをちゃんと生かして行きたいなと思いますし。

金: やっぱり二人とも各業界でチャレンジしたい、自分の国でチャレンジしてみたい、っていうのはあるんですね。業界は違いますが、いつか韓国と世界をつなげる仕事が一緒にできたらと思います。
本日はありがとうございました。

房: ありがとうございました。

写真:10年後の自分

【編集後記】
新入社員の2人の情熱がこれからどこに向かうのか、非常に楽しみになりました。
まだまだ内向きな視点の多い日本の企業文化の中、このような海外の若者達のグローバルな視点とどのように融合していくのかが、企業の分岐点になっていくのではないかと感じさせる対談でした。

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