外国人新入社員に聞く「なぜ今、日本の会社で働く道を選んだのか?」

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韓国の文化と人

房: 韓国も日本も人の目を気にするのは同じだと思います。ただ、気にするポイントがちょっと違っていて、日本は雰囲気を気にするじゃないですか。韓国は雰囲気よりも人のスタンダードに合わせて「これくらいはしなきゃ」「他の人もこれくらいするから私もこれをしなきゃ」っていうのがどこかにあって、例えば「みんながTOEIC受けているから私も受けよう」とか、「このサークルが流行っているから私も行こう」とか、気付いたらみんな同じことをやっていたりしますね。
ブームが速く、激しく広がって、すぐ終わっちゃう、とも言えますね。例えば私の世代だと一時的に中国に留学するとか、中国語を学ぶことが流行ったんです。で、みんなバーッて行ったんですが、結局すぐ冷めて中国に行っていた子の多くが韓国に戻ってきたり。

金: そうですね、勉強の面でも生活面でも個性がない。服のことに関しても日本だとコスプレする人や個性的なファッションの人も多いじゃないですか。でも韓国だとそういうのはなかなか見られないんです。韓国では自分がそうすることで他の人から「なんで変な恰好しているの?」って言われるし、友達や知り合いの親伝に自分の両親に話がいって「もうちょっと普通にしろ」みたいなことを両親から言われるんです。
個性だから活かしてもいいのにそれを発散したら変な目で見られちゃうのもあって。それを乗り越えれば大丈夫なんですけど、乗り越えるまでの過程がなかなか厳しい。

房: 日本も韓国も同じアジア圏なので人の目を気にしたりとか、“普通”じゃないと何か言われたり、他人から変に見られたりとかするのは、大差はないと思うんです。けど、日本のほうが変なところで文化的に緩い(笑)。
日本はテレビでもおネエ系の人とか出るけど、韓国ではそういう人はあんまり出ないです。日本の番組内で新キャラクターとして紹介しているので、本当に受け入れているのかどうかはわからないんですけど、そういうのを考えると「日本は韓国とはちょっと違った形で少数派を見ているんだ」、というイメージです。反応の違いはあるかな。

金: 日本だと雰囲気を読んで少数派を守ってあげようって感じなんですけど、韓国だと「君らが雰囲気を乱しているんだよ」って口に出してしまうんですよ。日本はあまり思っていることを口に出さないけど、韓国は言ってしまう。電車で全然知らないおばあちゃんに「なんでそんな恰好しているの?」って言われたり。
韓国に外国人が遊びに来るとおばあちゃんとかがコミュニケーションを取ろうとする動きがあるんですよ。大体が韓国語のまま話しかけてしまって混乱させてしまうんですけど(笑)世話好きというか、助けてあげようっていう考えや興味を持ってくれるのはいいんですけど、それがやりすぎだと困ってしまう。

あとは日本って体育界系って言われる分類がありますが、あんまり体育界系が特有のものとは感じないですね。韓国だと男は徴兵に行っていて縦社会は経験済みで、特別なものではないんですよ。

房: 縦社会が一番効率的に動ける組織体という考え方は、徴兵制度で経験しているからだと思います。多分男性は縦社会のやり方に慣れている感じですね。女性の場合は徴兵されないので、男性側と女性側の間で考えのずれが出てきたりします。面接官は男性が多いから、女性に対しても面接で「結婚しているの?」とか聞いているのかもしれないですね。

金: そうですね、縦社会では普通にあり得るというか、オープンになっているので。「それもOKじゃないの?」ってやっているんですけど、それが逆にアウトになっている。
結構、韓国で男たちが集まると飲み会では徴兵の話で盛り上がるんです。

房: あ、盛り上がりますね。韓国留学生会等行くと兵役の話は結構出てきます。「君はいつ兵役に行くの?早く行かなきゃ」って嫌な急かしがきたりして。(笑)
私の弟は義務兵役が終わった後、そのまま職業軍人で運送系の任務に就いているんですけど、日本人が一般的にイメージするようなガチガチの軍人ではないですね。就業時間や定年とかもちゃんと考えられている普通の公務員です。縦社会ではありますが、最近の兵役は緩いというか。義務兵役は少しきつめかもしれないですけど。

金: きつめというか縦社会なので、一番上の階級が命令を受けたらその下の人に命令して、その下の人はまた下に命令する、という構図があって。義務で行った人も階級分けがされるので、職業軍人さんから見ると僕たちは部下なんですよ。だから義務兵役で行った人が一番下っ端で、上の人がやりたくないものが回ってくる。

房: 韓国では「軍隊式の縦社会が今の時代に合っていない」という声が出ています。ただ、縦社会で育ってきた人は他の組織に入っても縦社会のルールにしたがるというのがある。もしくは、兵役で学んだ考え方を他の企業に入ってもそれが当たり前だと思っている。最近はこういう部分が問題にもなっていますね。

金: 私も徴兵に行ってからは言葉遣いとかに戸惑ったりしました。徴兵では上司と話す時は同期を呼び捨てにするんです。それを今でも時々忘れてしまうことがあって注意されることがありました(笑)

房: 兵役に行くと考え方変わりますよね。

金: そうですね。体育会系とは似ていると言えば似ているんですけど、二年間上司とも一緒に暮らしますし、言葉遣いとか考え方とかも変わっていくので、きついことを言われても心が折れなくなるというか(笑)「こんなものでしょ?」みたいになるので(笑)それが良いか悪いかはわからないですけど。

房: それがあるから日本の人から見ると「韓国の人ってめちゃくちゃタフだね」とか「なんでそこまでできるの?」って思うのかもしれないですが、それが普通になっているから、日本でいう体育会系見ても、そんなに厳しいと思わないかも。

私は逆にすごくフラットで、5、6歳離れていても敬語を使わずになんでも話せるような環境でした。日本に来てからも、周りに帰国子女が多かったので、ますますそういう概念がないのかもしれません。特に、最初はあんまり日本語が出来ないのもありまして、大学時代はバイト以外では敬語を使ったことはほとんどありませんでした。その影響で、私は会社に入ってから「あ、日本って厳しかったんだ」って感じました。入社してからやっと敬語を覚えるようになりました。いきなり礼儀正しくなった感じですね(笑)

写真:韓国の文化と人

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