育男たちのリアル

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本当の意味で男女が活躍できる世の中にするためには

大谷:母親になった人の話を聞いていると、やっぱり何人かは「子供を作るか、仕事を取るか」という選択をしちゃう人がいる。

森山:特に女性の場合ね、多いと思います。

大谷:天秤に掛けなきゃいけないという発想になってしまう、これをどうにかしていきたいよね。

森山:そうですね。会社の中で職種的に難しいものもありますが、なるべくそういう時に「=辞める」じゃなくて、一度会社と相談して挑戦して変えていくという選択肢があるほうがいいですよね。

鈴木:うち、8月に子供が生まれて、来年の春に保育園に入るための申し込みをしてきたんですけど。もし入れなかったらうちの妻は産休期間が終わっちゃって、会社に復帰できないんですよ。子供がいる30過ぎの女性が就職活動をするのは結構大変だと思うんです。
正社員で働けるキャリアとスキル、何より働く意欲があるのにそれができなくなっちゃうのはもったいないなあと。会社によって違うんだと思いますけど。

森山:いや、もったいないことだと思いますよ。

鈴木:2016年に新語・流行語大賞で『保育園落ちた日本死ね』という言葉が選ばれましたけど、こういう事だったのかっていうのは、子供ができて初めて分かりました。

森山:多分そういう思いをしたことがある家族の方とか、お母さんしか分からないというのもあると思いますけどね。

鈴木:本当に、役場の窓口は大混雑でしたから。

森山:今回のこの取材に僕ら3人が選ばれた理由の一つとしては、女性の社員やスタッフが多い部門ってことだと思うんです。部署の女性、どれくらいいます?

鈴木:半分以上。

大谷:7割ぐらい。

森山:すごく大きなテーマかなと思っています。常日頃、現場として直面している3人だと思うんですね。特に鈴木さん、大谷さんの2人は。
このテーマはすごく重くて簡単には解決はできないけど、一つ一つ解決していけたらなと思う。だから「結婚して出産して辞める」という選択肢の前に、出産して戻ってくる選択肢や、結婚しても続けていける選択肢や環境を用意できるかというのは、本当に取り組んでいきたいし、取り組まなきゃいけない課題。

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そのためには社員の理解もないといけないかな。みんなで取り組んでいきたいテーマ。新入社員を育てるのに3年~5年かかるのを考えると、働ける時間が少なくてもずっと会社に残ってもらえることはすごく助かります。

大谷:いろんな会社の話を聞くと、産休を取っていた社員が戻ってきたけど職種の幅は狭まっていました、とか「この中のどれやりますか」になっちゃうことが多くて。それが本人がやりたいことと合致していればいいけど、制度を優先されて「この仕事しかないから」みたいになっちゃうという話もよく聞く。それではその人が持っていたキャリアもスキルも活かされないよね。
どうしても時間に縛られることはあるんだけど「そういう状態で働く人とも、きちんと一緒に働いていこうよ」というふうに社会全体がなっていかないと、なかなかそこが繋がらない。

僕らなんかはデジタルで仕事をしている部門なので、ネットワークがどうとか、そういう話で解決できることもすごく増えてきたけど、対人が中心の職業はそういうところをどうしていくかが課題かな。でも、社会全体がそうならないと、最終的には広がりがどっかで止まっちゃうような気はする。

森山:職種によってはこれからまだまだ時間がかかったり、ハードルが高かったりする職種もあると思いますが、やっていける職種はどんどん挑戦してもいいかな。

大谷:なんか「この仕事はできない」と決めてかかっちゃっているところもまだまだ多いなと感じるよね。

森山:そうですね。時間の制限があっても役割を分けるなどしてやっていける方法を見出していけないだろうか。

大谷:子供を背負って営業に行っちゃいけないのかね?

森山鈴木:(笑)。

森山:政治や地域社会に求めたい助けもありますが、まず社内でできること、やれることは幾らでもあると思う。ただ、それには全社員の理解や予算、場所はいると思いますね。

鈴木:自分のところの部門も関わるんですけど、優秀なディレクターがちゃんと中で守って、本当にお客さんとの必要な接点だけをキープしてくれれば時短勤務でも回っていくと思っています。

森山:もうディレクター全員お母さんでもいいけどね。

鈴木:ママさんチームみたいな?

森山:うん。

鈴木:フォローも勿論必要だと思いますが、女性の強みを生かしてもらえそうなチームですね。

森山:会社の社風、文化を分かっていて、何が会社では必要とされているか、どういうことが大事か、を分かっている社員が限られた時間の中でどういう仕事をするかということは、実はものすごく大事なことだと僕は思っています。

あともう一つ、これはデザインやWEB、事務系の仕事でも一部考えられるかなと思うのは在宅。会社にいてやらなきゃいけない仕事もあれば「半日、これ持って帰ってやります」とか、朝から「今日は家でやります」という働き方も考えたい。

鈴木:実際、今ほとんど遠隔で営業とかやれたりとかして。

大谷:うちの部門の仕事は割とできる。総務とか経理とかも結構できるんじゃないかと思う。

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鈴木:そうですね。僕もちょっとお休みもらった日とか「家でできるな」なんて。

森山:経理は実際どういうふうにできるかを試しにやっているけど、管理部なんかも今後試してみたい。

鈴木:じゃあ僕やってみますか!

森山:鈴木さんからやってもいいんじゃない? 逆に男性だから駄目ということはないし。

鈴木:「じゃあ今日、子守しながら家でやります」みたいな。

森山:それから、女性管理職をもっと増やしたい。違ったアイデアや、やり方も出てくるんじゃないかと思います。だからこれは、会社の将来の大事なテーマではあると思う。それは本社、工場関係なく、子供の有無も関係なく。女性マネージャーの課題は、在宅と同じテーマかなと。
「現状活躍してくれている女性社員がいかに長く、生活環境が変わっても仕事を続けてくれるか」。彼女たちの活躍は、次の組織戦略とか、僕らが会社に求められて達成しなければならないタスクに、すごく大きな影響があるから。その戦力がいるか、いないかで本当に変わりますよね。

鈴木:それこそいろいろトライアルじゃないですけど、いろんなやり方をトライしているじゃないですか。でも、やり方はいろいろあると思うし、「とりあえずやってみようか」とかいろいろトライできるのはうちの会社ならではな気がしますね。

大谷:この間うちのチームのママさん社員が在宅で試してみたんだけど、「好きな時間でやっていい」といったら、朝5時からやっていたね。

鈴木:(笑)。でも、お子さんがいると、そういう生活サイクルもあると思うし。「とりあえずやってみよう」という感じになるのは、うちの強みじゃないですかね。

森山:だから課題にしているけど、残業削減なんかもそういう意図の中に入っている。昔は本社も工場も何でも社員がやるという感じだったんだけど、仕事もどんどん細分化していって、サポートとしてアルバイトさんやパートさんを増やしてきた。これからも1人に比重がかからないように組織で対応を増やしたい。まだまだ道半ばですけど、そういった組織体制も含めて残業削減もテーマ。もちろん子供がいる・いない関係なく。

鈴木:そうですよね。

大谷:独り者は残していいとか、そういうわけじゃないから。

鈴木:仕事終わりの時間を大切にしてほしいというか。遊びに行って欲しいし。

大谷:あと子育て以外にも、今後は介護とかも考えると、女性だけの問題とも言いきれない。

森山:もしかしたら、男性社員の中にも病気や介護などの問題が出てくるかもしれない。

大谷:一つ一つ解決していきたいよね。

森山:そうですね。鈴木さん、どうですか?
こういった時代の中で、女性の部下が半分以上を占めていて、ご自身も結婚され、奥さんの想いも感じ、お子さんも生まれた、今。

鈴木:……「重い」ですね。

森山大谷:(笑)。

森山: 家庭での気付きが職場に活かされるのかもしれないですね。僕たちは。

鈴木:……と言いますと?

森山:男と女、夫と妻がどう活躍するか。
たまに地元仲間が家に来るんだけど、仕事をしているママさんは、すごい不満やグチを話しています。でも「これって、リアルな声なんだなあ」と思って。自分は部下にどう接すればいいかとか、どう考えればいいかに気付きました。これからも一つ一つ気付いて、解決して、本当の意味で男女が活躍できる社会を作っていきたいですよね。

大谷:そうですね。「イクメン」って、自分の子供や家庭だけではなくて、会社だとか、地域だとか、それこそ社会全体を育てるということなのかもしれないですね。
なんか壮大な話ですけど、「イクメン」として、そこに向かって少しずつ良くなるように頑張っていきましょう。

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