営業を経てデザイナーへ
亀田:元々、コンサルティングに興味があったんですけど、不景気で企業コンサルの会社は下火でした。公認会計士も少しだけかじりましたが、やはり組織というものを考えたら、組織の最小構成単位は人なので、人に興味を持ったんですよね。全部ゼミからつながっていって、人材サービスの会社に入りました。
市村:そうでしたよね。
亀田:サービス業がこんなに厳しいとは、思っていなかったです。
市村:サービス業もそうですし、コンサルティングというのはきついですよね。
亀田:きつかったですが、人に興味があったので、すごく面白かったんですよ。そこに3年くらいいたんです。入社当時は人材教育部署で、大学生を中心に就活支援をしていました。そこから部署異動になって、新規開拓営業になったんです。
市村:そりゃまた、大変ですね。
亀田:ノベルティグッズを販売する広告代理業です。営業は向いているなと思っていたんですけど、クライアントを引き継がずにゼロからの始まりだったんです。異動していきなり飛び込み営業に行って、1日100社ほど回っていました。
市村:1日100社?!(笑)
亀田:はい、テレアポも含めてだいたいそのくらいでした(笑)。しばらく経った頃、広報課から声が掛かり異動が決まりました。突然だったので、腹が立って会社を辞めようと思ったんです。
市村:抜擢されたのに?
亀田:新規開拓を始めて、クライアントもたくさんできて「よし、ここからだ」という時にいきなりの異動ですよ。それでせっかく獲得したクライアントを全部引き継がないといけなくなったんです。でも、ある方に相談したら「とりあえず広報課でやってみたら?」と言われて。やってみたんですよ、そしたらすごく面白かった(笑)。
デザインにハマってしまって、短期間でデザイン業務に必要なソフトの使い方を覚えました。1年くらいそこでやっていたんですけど、もっとデザインの力を伸ばしたいと考えて、転職を決めました。
その時、広報課異動の際に相談した方が飲食店を経営していて「うちでちょうど通販サイトを始めるから、やってみない?」と誘ってくれたので、お世話になることにしました。
市村:へえー。
亀田:そこではECサイトのデザインを担当しました。飲食店を5店舗経営している会社だったんですけど、店舗のマーケティングなどもやりましたね。店舗の数字とか集客イベントのデータ集計とか、すごく面白かったです。
1年余り仕事をさせて頂いた後、もっとデザインの力をつけたいと思い、水上印刷の紙媒体のデザイナー募集を見て応募しました。一次面接から最終面接まで1週間もかからなかった。実際に仕事をしていない期間は半月もなかったです。
市村:今、すごくいきいきしてますもんね(笑)。
過去から未来へとつなぐ道、マーケティングとクリエイティブ
亀田:今までやってきたマーケティングや分析は、過去から現在のベクトルでその先を考えるというものでした。現状があって、その過去はどうだったのかをリサーチして、過去から現在のベクトルの延長線上で将来どうなるかという予測をしていく。
市村:ゼミでやっている流れですね。
亀田:僕がすごく興味を持ったのは、デザインはその逆の流れがあるというところです。ブランディングもそうなんですが「こうありたい」という未来、理想像がある。そこから逆算して、そこへつながるルートがたくさんある中で、最善手を選ぶ。
市村:亀田君は昔から「将来こういうふうになればいいな」というコンセプトに対する意識を、すごく持っていたと思うんですよね。
亀田:確かにそうでしたね。こうなりたいと思う理想が、とても強かったですね。
市村:未来から遡及することをバックキャスティングと言いますが、理想像から遡及してどうなれば良いかということは、当時はまだできてなかったと思います。それが、亀田君が社会人のキャリアを経て、バックキャスティングのプロセスを考えることができるようになった、と今の話で感じましたね。
亀田:はい。学生時代には見えていなかったものが、実際に社会で体験してみていろいろ見えてきましたね。
市村:過去から現在までの流れを見て未来を予測する。学生時代にそういう勉強をしてきた亀田君が、今は未来を先に見据えて、目標を達成するためには今どうすればいいのかというのを考えている。過去と現在をつなぎながら、未来を作っていくという形になっていると思うんですよね。だから今の仕事は、亀田君が元々持っているものに合っているような気がしますね。
亀田:今やっているデザインと、マーケティングやトレンド情報などを蓄積して、社内シンクタンク、アイディアボックスみたいなものがあったらいいなと考えていて、興味を持っています。
市村:自分で作る?
亀田:ただのマーケティングだけではなくて、クリエイティブの要素を合わせるとどうなるのか、未知数だなと思うんですよ。デザイナーとしてはまだ4年くらいで、経験が浅いのでもっと力をつけていきたいと思っています。
市村:顧客との持続的な関係をどうやって築いていくかというのが、大切になりそうですね。営業時代は次々に飛び込みをして新規の顧客を見つけて、その関係はいったん終わり、というのがあったと思うんですけど。そうではなくて、1人のお客さんとの関係を長期的に継続して築いていくということをやっていけたらいいですね。
亀田:そうですね。今までは、それは自分の仕事ではないと考えていました。新規を取るのが仕事だったので、常に新規に向かって、後はもう任せていたんです。
市村:新規を取り続けるのは、力があれば問題ないでしょうけど、やっぱり競争にさらされてしまいますからね。
亀田:それは、もう本当に常に感じています。
市村:いかに付き合いを持続していけるか、というのはとても大事だと思うんですよね。
亀田:付き合いを持続したいお客さんに対する、提案・企画力がまだ弱いというのが、自分の中で感じているところです。そういうところも勉強していきたいなと思います。
市村:私が授業で教えていた財務の力もそこにあればいいですね。
亀田:確かに(笑)。マーケティングとデザインの両方の要素をつなぐ存在として、お客さんにより良い提案をしたい。その結果を分析して、またデザインに反映して、ということを長期的にやっていきたいですね。
市村:デザインとマーケティングを経験している、希少なパーソナリティを活かせるところですね。