紙に近づく、電子ペーパー
面谷: 「だけど紙はやっぱり出したくない」というなら、電子ペーパーを使うと便利ですよ。
たとえば搭乗券。私は昨日アメリカから帰ってきたんだけど、搭乗券は電子ペーパーで見せたんですよ。
池田: えっ、これで通れるんですか。この電子ペーパー、ネットワークは繋がっているんですか?
面谷: うん、ワイヤレスで持っているからいつでも繋がる。紙面上で文章を扱っているみたいにできるわけですよ。
池田: 電子ペーパー、サイズが大きいし使いやすそうでいいですね。
これって市販されているんですか?
面谷: いくらだったら買ってもいいと思いますか?
池田: 1万円!
面谷: いいですねえ、そのくらいで買えれば。実は10万(笑)。ちょっと高すぎる。
池田: そんなにするんですか!
そういえばこれ(電子ペーパー)、モノクロなんですね。
面谷: データ的には赤や青で入っているので、改めてフルカラーのディスプレイに表示すれば、これは赤字、青字となります。でも、大体はモノクロ手書きで用は済む。
池田: 実際、印刷会社でも使いそうですよね。赤字確認をするためだけに大量に出力して、チェックして、その大量の校正紙を保管するんですけど、電子ペーパーならチェックができて、このまま電子的に保存もできるからスペースをとらなくていいですね。
面谷: 私も去年の10月に出版した「トコトンやさしい電磁気の本」の校正をした時にも、この電子ペーパーを使ったんですよ。大量の校正紙を使うような作業の何割かは、こういうので済むかもしれないですね。
池田: できると思いますね。タブレットより使いやすそうに見えますし。
面谷: 軽いからかな。
池田: あ、ほんとだ。本より軽いですね。そうか、バックライトもないんですね。
面谷: だからあんまり大きいバッテリーがいらない、それで軽い。タブレットは発光でエネルギーを使って大きなバッテリーを積まないといけなくて。
池田: 本体の大半がバッテリーだったりするんですか?
面谷: そうそう。これとタブレットの重さの差は、バッテリー。工夫すればもっと軽くなる。本当はこれフレキシブルで曲がる媒体なんだけど、わざと硬い枠をつけて保護しています。
池田: 紙に近づいている感じがしますよね。平面ディスプレイというよりも。
面谷: 曲がらなくてもいいと思うんだけど、少なくともガラスみたいに割れる要素はないし、壊れる心配もない。手書きのメモにも使える。
池田: なるほど。ノートみたいですね。反応もいい。
面谷: まずは一台、池田くんが率先して使ってみたら? 「我が社の業務が圧倒的に変わるかもしれないから、とりあえず買ってくれ」という感じで、おねだりして(笑)。
可能性を拡げる電子ペーパー
池田: 一方で、先生は紙のノートも持ち歩いているんですね。
面谷: そうなんですよ。それで私は悩んでいる。今までずっと紙のノートを取ってきて、このノートに全ての情報を集約し続けたい。電子ペーパーに書いてしまうと、情報が分散して困る。それでなにをやっているかというと、電子ペーパーをプリントアウトして、ノートに貼る。これで全部の情報がノートに集まる。
だったら電子ペーパーの意味がない、と言われそうなんだけど、意味はあります。
池田: あるんですか?
面谷: 私はだいたい1ヶ月でノート1冊を使い切るんです。
面谷: 常にカバンには2冊入れていて、1ヶ月前までの情報はカバンの中にいつも入っている。だけどたまに、2ヶ月前のノート、3ヶ月前のノートに書いた内容を確認したくて、「しまった、今手元にない! でもそういえば、電子ペーパーに書いてあるな」というときがあるんです。
池田: なるほど(笑)。
面谷: やっぱり電子ペーパーのほうが圧倒的にたくさんの情報を持って歩けるので。
池田: 軽いし、どんなに書いても重くならないですからね。
面谷: やっぱり過去の情報をちゃんと手元に持つという意味では便利なので、プリントアウトして貼ったとしても、電子ペーパーに書いていることに意味がありました。今は電子ペーパー関係の仕事は、なるべく電子ペーパーにメモをとるようにしています。電子ペーパーの話はこっちにあるはず、と検索ができるので。
池田: 電子ペーパーは今、どういうところまできているんですか?
面谷: 商品として実用化されたものとしては、これが一番到達点が高いですね。ある程度軽くて大きい。唯一課題と言われるのが、カラーの表現です。
かなり良いカラーが出るようになってきているのが現在研究レベルなので、数年以内に商品化するんじゃないですかね。
池田: カラーになると、使いたくなる人が増えるかもしれないですね。
面谷: カラーになった時には、ユーザーのほうもある程度割り切ってほしいです。液晶並みのTVみたいなカラーを期待されても困る。裏からバックライトを贅沢に光らせた場合のような、鮮やかなカラーにはやっぱりならない。カラー写真を楽しむのとは用途が違います。
色刷りの本で「黒と赤と青で書いてあったほうが読みやすいよね」、というくらいのカラーは十分にできます。
たとえば本を作るときに、カラーにすると高くなるからガイドブックでも、最初の10ページくらいはカラーで後は白黒、せいぜい赤と黒の二色にして節約するでしょう?それを節約するくらいだったらを電子ペーパーに置き換えたほうが、ちょっと鈍いカラーだけど赤と青と黒の三色を見分けられるくらいの色にすることはできます。そうすればカラーにしたからって、別にコストが上がるわけではない。そういう用途もあります。
池田: 電子ペーパーの利用って、能動的というか。「読む」だけじゃなくて、「書く」というところが重要なんですね、きっと。「読む」だけだったら、タブレットでもいいのかな。
面谷: それこそ校正をするのはディスプレイより紙がいいとみんな思っているならば、電子ペーパーだったらだいたい紙並みの作業、パフォーマンスができます。