#4 “もっと社会に目を向けること、世界の動きにも。”
余暇が時間生産性の糸口
浅野: 残業時間の問題も非常に重要なの。正社員が多い国だとそうだけど、定時が18として。それまでぽーっとしてるだけね。何もしてない。やってるふりしてて。18から2時間ぐらい残業やるんですよ。がっぽがっぽ。残業代で稼がないと、実質賃金が低下しつづけている日本ではやっていけないのが今の男、日本の社会。
アメリカもフランスもスウェーデンも。終業の17時5分前までにちゃんと片付けるっていう時間観念があるわけね。だから、生産性ものすごい高いんです。日本は、本当に悲しいくらい低いの。労働生産性が低いの。むちゃくちゃだよ。何でそうなっちゃうのっていったら、ダラダラやってるだけ。やっているふりをしているだけ。残業時間が多いのが人事考課でプラスに評価する企業が多い、という話を聞くと、日本はまだ発展途上国かと思いますね。
年間労働時間は、ドイツが今一番低くなって絶好調ですわ。ドイツは1,400、フランスが1,460で、アメリカが1,700。日本は1,730というけども嘘ばっかり、2,300ですよ。厚生労働省ではなく総務省の残業入れた正社員の年間労働時間調査ではね。
通勤で1時間半だよ、片道。地方なら行って帰って15分以内って当たり前だし、そういうこと可能なんですよ。でも、一極集中で東京に来ちゃって。朝も来て、夜も来てね。何これって。2,300働いて、通勤時間3時間入れたら、子供の顔も知らない。晩御飯一緒に食べるってのは当たり前なのに、そういうこともやれない国なの。これは深刻よ。これで真面目に働いてって言ったって、やれるわけないじゃん。人間らしくないもん、本当に。
高度成長時代の残業やってもりもり働けば何とか、というあの時代の考え方がそのまま、まん延してるわけ。で、過労死っていう変な日本語作られちゃって、某大企業では自殺という大問題で、子会社まで入れて査察に入ったわけよ。珍しいよ、大企業に査察が入るってのはね。
結局、時間との戦いなんですよ。電車の中であれ、お風呂の中であれ、どこであれ、サービス残業をやってるわけ。
田中: そうですね。
浅野: 今日なんかは、2時間目だけど朝4時に起きなきゃいかんとか、すごいよ。5時に起きなきゃいかんとかね。腰痛くて満員電車に乗れないから。座ってこないといけないから。そういうのもあるけれど、残業を入れた拘束時間としての労働時間だけが日本では問題になるけれど、余暇時間でいつも仕事のこと考えているんだから、人間は。だから日本はもっと拘束時間を短くしてほしい。そうすると有給休暇取ろうが、余暇時間取ろうが、ヨーロッパは労働時間低いでしょう。で、週2日は完全休み。子供との触れ合いもできるだけ多くしようと。それが本人にとってプラスになるわけね。ここが、まだ日本は分かってないの。
例えば、フランスも専業主婦が多かったんだけど、今徐々に当たり前の国になりつつあって。これ、出たばかりなんだけど。東大卒のお姉さんがね、向こうへ留学して、その勢いでサラリーマンと結婚しちゃって、2人子供つくって、フランスの少子化対策について本を書いているの。いいよ、これ。この本。
田中: 『フランスはどう少子化を克服したか』(新潮新書)。
浅野: 「男は2週間で父親になる」というキャッチフレーズなんだよ。出産と同時に2週間休み取れるからね、向こうは。オムツから何から、やらされるわけ、一生懸命。だんだんうまくなっていくわけ。今、フランスはそういう政策なのよ。
田中: 男性は、子供生まれたら育休、産休で2週間休めるってことですか?
浅野: 1日ぐらいずれがあるけれど、何日の何時ごろ生まれるっていうのは、今分かるじゃない。そうすると課長が「そろそろ病院に行って来い」ってなるわけね。行ったけども、空振りで生まれなかった。いいの、1日ぐらいずれても。で、生まれた日から2週間。
奥さんの肩を揉んだりとか、自分も抱かせてもらったりとか、出産から3日で家に帰らなきゃいけないから。3日で帰ると、お乳、それ何とかだ、お風呂だ何とかで、やらされるの。
すごいやらされるんだって。その最新情報知らなかった。今、これね。面白い。
子育てもそうだし、余暇時間を設けて、例えば円山動物園に行ったからといって効果があるかなんて分からない。だけどもドイツ、フランス的な発想でいうと、特別展があるから交代で見に行かせようとかね。ああいうのもできるだけ見させて、だから会社自体が博物館の特別会員になったりね。重要なんですよ、ものすごく。これを「投資」というんだがわかるかな?
それやるとどれだけ成果出ますかって、分かるわけないじゃん。だけど社長がこれ重要だなあって思ったら、やればいいじゃん。どんどん休憩と称して、何でもいいから行かせるわけよ、仕事時間中に。これも「投資」、人材への「投資」ね。
田中: 仕事時間中に行くんですか?
浅野: 場合によっては大学でも専門学校でもいいから、いろいろ相談に乗っておいで。1週間に1回行ってこい。これも重要ですよ。何でもいいんだけど、そういう機会を社員に持たせなきゃいけないわけ。日常の仕事以外に。それも重要でね、そういうことできる会社は余裕があるって言われたら怒られちゃうけど、そんなの当たり前なの。ドイツ行ってみたら、フランス行ってみたら。重要だと思うよ。ぜひそういう、よく分かった女性管理職になれるといいけどね。
田中: 女性管理職に?
浅野: 女性管理職ね。
田中: 頑張ります(笑)。
先生、ありがとうございます!今日、対談のはずなんですけど授業受けてる気分に(笑)。私途中から相槌しか打ってないですよ(笑)。
では最後になりますが、今の大学生や就活生に望むことや、メッセージを御願いします。
浅野: “もっと社会に目を向けること、世界の動きにも”
田中: 本当、それにつきますね。つい自己分析とか、面接に受かることばかり考えてしまいますが、まずはもっと世の中の動きを知ることが大切で、先生はいつも授業中繰り返し、皆にもっと世の中を知れと仰ってくださってましたね。
私自身も、初心に帰った気持ちです。
今年最後の年という事で、特別講義が聞けて嬉しかったです。また、皆で行きますので、まだまだ未熟な私達に色々と教えてくださいね。今日は本当にありがとうございました。