“働く”を控えた若者へ~7年ごしの特別講義~

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#3 病める大企業病男子

大企業病男子

田中: 今の就活生の傾向というか、伝えたいことなどありますか?

浅野: 女性に優しいっていう言葉がいいかどうかは別にしても、今のこの課題は仕事と結婚ね。子育てっていうよりは、彼氏との時間を大事にする。仕事と結婚、子育て等を両立できるような、そういうファミリーフレンドリー企業であればあるほど、成績は伸びていくと思うよ。企業はホームページに、そういうことをきちんと謳わなきゃいけないし。安倍政権が謳っている女性活用が本当かどうかわからないけれど、欧米では女性管理職比率が高く、女性の就業率が高い国は生産性が高く、労働時間が短いという好循環になるというデータが出ている。中堅・中小企業も企業内か、あるいは近隣の企業と合同で企業内保育所を作るくらいにならないと。これ、あとで二番目を話すけど、最初の「投資」だね。

私を採ってください。ぜひ頑張ります。という子より、いろんなことに関心のある子がいいね。音楽も好きだ、美術も好きだ、労働時間が1,400のドイツってのは何て素晴らしいんだろう!行ってみたいなあとか。そういうことに関心が非常にある子は、伸びると思う。今のところは0で、仕事経験0だけど、いろんなことに関心がある。どのくらい関心の幅があるか。そりゃあ書けるわな。書いてみて、この子1回会ってみたいなあっていう。そういう世界じゃないの。

私は父親の関係の何とかで、何とかが有名なあれで、ぜひ私はここにいきたいと思ってました。そんな志望動機書いたってびりびりだからね。男、多いの、そういう子。今どき大企業っていったって、総合職も今は2つに分かれて、地域限定、職種限定、何とか限定の、まあ一般職と変わらないあれと。本当の総合職っていうのは、エリート中のエリートなんだよ。

総合職に関してはみんな誤解してるの。大卒の15パーセントまでの段階の総合職と、大学進学率が50 パーセント超えた総合職は、意味違うわけ。しかも、日本全体で高度成長終わって、雇用人数が減ってるのに、みんな大企業で総合職いきたがってるわけね。無理なの、はっきり言うと。東大だって、今、日本企業捨ててるわけ。昔だったら、三菱東京UFJ一番ね。それから新日鉄とか何とか優良企業にみんな行きたがる。今、東大生いかないんだよ。どこかっていったら、マッキンゼー。マッキンゼーね、トップがね。あと、外資系だよ。外資系で2、3年やって、2番目の就職口で、あとは野村の何かに入るとかね。年収2,000万。そういうの増えているよ。これはこれで、エリートは英語を勉強してるからいいんですけどね。大部分の子はどうしたらいいんだろうね、今の男。なおかつこの子たち、さっき女の子は専業主婦願望強いって言ったけど、こっちは大企業病ですよ。

田中: 大企業病いい。わかりやすいですね。

浅野: 大企業病にかかってるね。今はITでも何でも色んな会社が出てきた。就職関係の本、山ほど持ってるけど。息子や娘がね、カタカナで何とかっていう会社の内定をようやくもらいましたと報告してもね、お母さんはよく頑張ったねって言わないんだよ。そんなところ辞めたら?ってことを言う。駄目なの。お母さんは昔の大企業から知らない。だからこう言うわけ。「僕ちゃん、授業料出してやるから、もう1年やらない?」って。多いの。

そのための塾もあるんだよ。その塾のための本が、またあるわけ。すごいわ。どこが一番多いですかって、MARCHレベルの大学、あのクラスなの。お母さんが金持ちで、お父さんもいいとこ。学生は大企業病。有名じゃないと駄目なの。コマーシャルやってないと駄目なの。だけど、B to Cはコマーシャルやるけど、B to Bはコマーシャルなんてやらないよってこと分かるためにすごく時間かかるのね。男の子ね。飲み込み悪いの、本当に。だから大企業病になっちゃってるんだって。染み付いてる、小っちゃいときから。

田中: そうですね。

浅野: なぜかというと、高校時代、受験勉強まともにやったことがないくせに、3年生終わりになったら目の色変わって、2番目の復活戦なんだって思ってるわけ。就活の時期にね。そのときに、日本の悪いのはネット公募で大学名問いませんって、これうそなんだけど。きちゃってるから、もうこれは授業なんかさぼってでもね、行かなくちゃ。5万、10万当たり前なの。殺到するわけ。儲かるのはマイナビとリクナビと仲介業者。三月はまだ説明会で、六月のあれまでね、彼らが暗躍するわけですよ。説明で上手だったから、いい会社。うそだよ。そんなのマイナビの連中がやってるだけだって言ったって、信用しない。見てきたように僕が言うんだけど、駄目なんだよね。ゼミの子はそう。

田中: 駄目ですか。

浅野: そういう話があって、専業主婦願望と同じで大企業病にかかってる。それよりは実質ですな。今、大企業入って牛の尻尾になるよりは、ニワトリの頭になれって中国の諺知ってるよね。

田中: うん。

浅野: ニワトリの頭んなろうとしないんだよ、みんな。牛の尻尾でいいっていうわけ。とにかく大企業であればいいと。大きな、有名な。で、大企業も子会社になっちゃうわけ。

田中: インターン生や学生に聞かれて驚いたことがあって、“大手は受けようと思わなかったんですか”って。結構聞かれるんですよ。

浅野: あなたが聞かれるの?

田中: そう。

浅野: そりゃあ、笑っちゃえばいいんだよ。おまえドイツ見てごらん。ドイツはみんな中小企業でもっているんだよって言えばいいんだよ。ドイツはそうだよ。しかもドイツは年間労働時間1,400時間をきったときた。

田中: そのときは、「安定志向を求めて大手に行く人はどっちにしろ入ったとしても、結局生き残っていけない。」と話しました。

浅野: 大手だって新しい価値を創造してくれそうな人材を必死になって探しているんだ。生涯賃金2億円で解雇不自由だとすると、高い買い物になる。だから第7次選考までやるわけさ。採用した人材が10年たって期待外れでも、社内異動で閑職にまわせばよかった。

中堅・中小企業はそれだけの余裕がない。しかし今は大企業も余裕がなくなってきた。会社を変えてくれるかもしれないという期待をもって「内定」出しているんだ。そんなことも知らずに、入りたい、入ったら何でもします、なんて子はいらないんだよ。繰り返すよ。もうそんな子、要らないの。入りたい、入りたいと書いてあるわけ。何でもしますと書いてある。でも、要らないわけ。もう根っこから狂ってるわけ、彼らは。

課長とけんかしてでも私のやりたいことを会社の中でやります、なんて書いてないわけね。駄目だ、何でもやります。そしたら、日曜日でも来ます。徹夜労働でもやりますという、あの最近ニュースになった広告代理店や、飲み屋の何かとどこが違うんだっていうくらい。自分から過労死願望ですわ。大企業願望、過労死願望。

田中: すごく面白い話ですが…書けなくない? 大丈夫これ(笑)。

写真:大企業病男子

専業主婦モデルのドイツ

浅野: 大企業って何かっていったら、やっぱり結局ソフトであり、ものづくりってことになっちゃって、一つ一つ。そこで強いのは、日本とドイツなの。今だに世界で強いのは。本当そうよ。だけど、医薬品関係除けば、ドイツって中小企業多いですよ。本当に多くて、優良。給与もいいし。ドイツ人は学歴とか、企業間格差による賃金格差も少ないの。

ただ、保育とか何とかでいうと最低だけどね。ドイツは悪いの、フランスと比べて。なぜかドイツは、小学校はお昼でおしまいなの。お昼でおしまいだったら、学童保育どうすんだってことになっちゃう。小学校だよ、小学校。お昼でおしまいだったら、お母さん働いておれないじゃん。10時から16時まで働いて取りに行くって話と、そこが遅れてる、ドイツはね。だから、日本と並んで合計特殊出生率が、1.32ですって。底辺張ってるわけね、イタリアと並んで。日本は1.25から1.43まで上がったけど、まだ大したことないわな。

堂々のトップのフランスは2.0。もう違うわ。だけど、フランス人は遊ぶことしか考えてない。やることはやるんだよ、怒られるから。あそこはあそこで違うんだよ。一生懸命プロ意識出して、俺仕事好きだなんて誰もいないわ。ドイツ人は日本人とよく似てて、サービス残業だってやる子いっぱい出てくる。ドイツはよく似てる、確かに。そこで、女性活用のモデルっていうのは、ドイツにはないんですよ。駄目なの。ドイツは専業主婦モデルなの。

田中: 同じですね。

浅野: 本当、面白い。どこの本にも書いてないけど、ドイツはそういうタイプなの。世界一の労働生産性、世界一短い労働時間。だけど、余暇時間とかバカンスの時間はフランスが断トツでね、もう100パーセント取るわけな。すごいよねえ。それが生きがいだと思ってるわけよ。いかないと、子供が気の毒なの。夏休みがあけて九月になって、どこも行かなくてパリでじっとしてたなんて言ったら気の毒だよ。格好つけるために、2週間でいいから南フランスのどっか行くとかね。そういう見栄っ張りの国ですわね、おフランスはね。

日本の見栄っ張りは何だろう。何もないね。うちの子はどこの会社いったか自慢する。だけど結局、名前が通ってる企業かもしれないけど、いつ干されるか分からないポジション。所属はしているけれども、っていうあれでね。本体自体がいつ殺されるか分からないようなところが今だにいいんだって。ちょっと信じられないわ。

写真:専業主婦モデルのドイツ

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