恩師を訪ねて ~輝く女性、「いて欲しい人」になる~

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会社に「いて欲しい人」になる

高橋:先生、今お子さんおいくつですか?

山田:11歳。今年から小学6年生。

高橋:大きい! すごいですね!
先生はどうやって仕事と家庭を両立させているんですか?

山田:今はもう大きくなったのでだいぶ楽だけど、生まれた時はやっぱり家族が助けてくれないとなかなか難しいよね。うちの旦那さんは子供が生まれた頃は所謂フルタイムのサラリーマンではなかったので、風邪ひいたりして子供が休む時はどちらかが順番に休む感じでしたね。あとは実家の母とか呼んで頼んだりとか、しょっちゅうでした。

最初の2、3年は子供も病気にかかりやすくて、とても大変でした。子供から病気が移って入院したから、私(笑)。

高橋:え、先生入院したんですか?!

山田:そう(笑)
4月に職場へ復帰して、子供を保育園に入れたら子供が風邪をひいて、家族中にそれが移ってしまって。もう一週間おきに病院行くような感じでした。治って保育園連れて行く、またちょっとすると熱が出て病院に行くみたいな。自分も熱がある状態でそれをずっとやっていたら40度くらいの熱が出てダウンしちゃって。復帰して2ヶ月くらいで10日間ほど入院しました(笑)。

高橋:そんなに? 大変ですね……。

山田:あんまりないと思うんですけど、そこで「ダメなときは『ダメだからお願い!』と言うようにしないといけないな」と思って、それから周りにちゃんと頼るようになりましたね。

戻って来てほしい人材

高橋:やっぱり無理しちゃいけないということですね。

山田:そうね、子育ては長期戦なので無理は出来ないなと実感しました。
けれど、周りの助けも得られる環境だったし、学校の他の先生方も理解があったので、とても助かりましたね。

今は女性のグラフィックデザイナーも多いでしょうから、みんな結婚してお母さんになってからも仕事を続ける人がきっといっぱい出てくる。

高橋:いっぱい出てきますよね。
うちも6時間勤務制の「スリークォーター制度」というのがあるんですけど、それを利用する人がやっぱり増えてきていて。人によってちょっと差はあるんですけど、9~16時とかで働いている人も多くいます。

山田:企業訪問しても「他の会社さんはどういうふうにやっているんですかね?」と質問されることが増えています。「女の人が増えてきているから働きやすい環境を作らないと、せっかく仕事を覚えてもらってもすぐ手放さなきゃいけなくなっちゃうから」と。

私が女性だからそういう話になるのかもしれないですけど、考えないと上手く回っていかないところですよね。今は「女性が如何に長く働ける環境を作れるか」を考えている企業さんが増えてきているんじゃないかな。

高橋:もったいないですもんね。女の子の方が気が利く子も多いし。

山田:そうね。
元々業界自体がハードだからこのままだとなかなかね。ほんとみんな結婚できないし、子育てもできなくなっちゃうから企業側に考えてもらえると女の子も働き続けやすくなるよね。

反対に働く女性側は、産休や育休でいなくなることもあることを考えると「戻って来てほしい人材でいる」というのが大事ですよね。

高橋:それ確かに大事ですね。「戻って来てほしい人材でいる」というのは意識したことなかったです。

山田:産休前は正直意識してなかったんだけど、でも戻ってきた時にすごく思いましたね。子供が熱を出したりして、帰らなくてはいけなくなった時に「こんなにいなくなっちゃうならいらないや」と言われたらもう終わりじゃないですか。
だから「『それでも、いてほしい』と思われるようにしなきゃ」と強く思いました。

高橋:なるほど。育児と仕事を両立させるとなると、どうしても周りに迷惑をかけてしまう場面は出てきますもんね。「いてほしい人になる」ために考えなきゃいけない。

山田:保育園に行くとお母さんたちがいっぱいいるんだけど、みんな17時に仕事上がらないと迎えに来られないような環境で働いているので、もう分刻みだよね。
「あと5分あるから、あれが出来る」とか「あと15分あるから、あれをやれば17時ジャストに出られる」とか、それを朝からずっと考えながら動くみたいな。多分復帰した時が一番効率よく働いていた気がします。そうしていないと、明日もしかしたら休まないといけない状況になるかもしれない。

ある程度の仕事は優先順位をつけられるけど、明日いない可能性があるからそれも考えなきゃいけない。帰ったら子供が熱を出しているかもしれないし。

高橋:そうか、その日に全部やれることはもうやっておかないといけないんですね。

山田:やっておかないと周りも自分も困るのを体感したので、時間の使い方が少し上手くなったかな。

高橋:その日に終わらせる、というのはやっぱり大切ですよね。

山田:自分の気持ちだけじゃなくて、子供は自分の思うようにはコントロール出来ないからそうせざるを得ない。自分だけだったら「ちょっと我慢すればいいや」とか「明日頑張ればいいや」とか整理できちゃうんだけど、子供がいると子供はそういうわけにはいかないので。
「私が頑張ればいいや」で済まなかったりもするから、「やらなきゃ」って自然とそういうふうになるのかもしれないですね。
そういう働き方を経験するのも面白いかもしれないね。

高橋:確かにまた全然違う。「自分だけ頑張ればいいや」じゃなくなりますもんね。

山田:そうなんですよね。すごく大変だったけど、今思えばそういうことで仕事の考え方とか働き方が変わったかな、という気がしています。

高橋:「大変そうだな」というのは見ていると思うんですけど、それ聞いて少し楽しみになってきました。

山田:その当時は大変なんだけど、振り返ると「まあ、なんでも経験かな」みたいな。

高橋:それもまたステップアップになる感じがします。それはそれで大変だけど、でも必要ですね。

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