人と体験から学ぶから、人付き合いが一番大事。

顧客ターゲットを置かず、一番客層の広い範囲で展開していく株式会社一の湯。会社を引っ張り行く小川晴也氏に聞く、第三回は「人と体験から学ぶから、人付き合いが一番大事」をお届け致します。
小川 晴也

株式会社一の湯 代表取締役 小川 晴也さん

HP:http://www.ichinoyu.co.jp/
-Profile-
株式会社一の湯 代表取締役社長。昭和24年生まれ。昭和39年慶応義塾高等学校、昭和42年慶応義塾大学経済学部卒。高校・大学を通じてゴルフ部に所属。昭和46年日本ユニバック株式会社入社。昭和53年、家業の株式会社一の湯へ。現在に至る。


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生産性で時間とお金の話が出ましたが、時間とお金と人付き合いのご自身のこだわりみたいなのはありますか?

はっきり言って人付き合いが一番重要だな。人付き合いのために時間を使い、人付き合いのためにお金を使うっていう。
あとはね、嫌いなやつでも最初会わなきゃだめだよね。こいつ嫌いそうだなと思っても、一回は会う。それで嫌いだったらもう会わない。嫌いな人としゃべっても全然意味がないからね。後は、誘われたらなるべく行く。行くことを第一にして、どうしてもだめだったら何とか次を考える。

じゃあ、時間はどうですか?

時間はね…あんまり考えてることはないな。予定を立てるのはへたくそなんだよ俺。
ダブってどんどんどんどんいれちゃったりするから。時間は基本人付き合いのためにあるってこと。自分のための時間なんて全然ないな。

自分のため、例えば勉強はどういう風にされてるんですか?

勉強、嫌い!
字が嫌いなんだ。字読むの嫌い。眠くなっちゃう。あれ読んでても、ずっとおんなじところ読んじゃう。行が進まないんだよ。
だから人付き合いで学ぶんだ。人が何か知らないこと言ってくれるから、ふーんっつって。聞いて、「なにそれ」って聞いて、「そうなんだ~」みたいな。

聞いて学ぶんですね。お金はどうですか?

生産性に走ったって言うのは、お金がなかったからやったんだよね。話すとちょっと長くなるんだけど、企業をでっかくするには絶対的に投資がいる。投資なしではでっかくなんないんだよ。つまり、お金がないのにでっかくしようと思うと、何が起こるかって言うと、借財をするか、あるいは他人の投資家に頼んでお金を出してもらうかしかないわけよ。
で、みんな売り上げにこだわるときっていうのは、投資しないで売上を上げようとするんだよ。例えば、努力して10%増しとかそういうこと考える。だけど、10%増しを5年も続けるのは無理だよ。だってさ、キャパシティきまってんだから。

毎年10%ずつ成長ってことですか?それは難しいですよね。

絶対無理だよ。倍にしたかったら、投資が必要なんだよ。それで、お金があれば投資って話になるけど、例えば3分の1自分のお金で、3分の2他所からで、それを10にしてなんか投資しようとする。それは売上高を上げるための策として正しいけれど、うちはお金がなかったからね。お金がなくて、だけど店が2軒残ってたから、店から上がってくる売り上げと粗利益で、それで赤字会社じゃなくするにはどうしたらいいかって、生産性のほうに行かざるをえなかったんだ。

経営者として修羅場も経験されて、モットーや価値観は、20代30代とか変わってないものなのか、もしくは結構変わってきているものなのか。どうですか?

どうかな。価値観はあんまり変わってないかもしれないな。
子供のときから「死なない」とかそういうのが前提だから変わっていない。それから、自分が知らなくても、知ってる範囲では一番上にいたほうがいいと思っている。
少なくとも自分が知った中では、レベルとしては一番上に必ず立ってたほうがいい。自分の知る中で、俺よりすごいやつがいるなと思って、下にいるのは嫌なんだよね。で、知らない世界を見ると、上でも下でも横でもいいんだけど、初めて知らない世界を見る。主に旅行が一番知らない世界を見るチャンスなんだけど、その時に、こりゃもうちょっとそっちのほうも触れたほうがいいかなと思うじゃない。それは、年中そう考えてはいるね。

知ってる世界とは、例えばどれくらいの範囲のことですか?

知ってる世界っていうのは、簡単に言うと経験した世界ってことだから、まあ、体験のほうがいいかな。体験した世界の範囲で、今までやった中でこれ一番レベル高かったなって思ったら、それならそれでいいやと。そんなことを考えておこうと。ずっと思うんだけど。
やるからには一番がいいってことだよ。

その最たるものが仕事ってことですよね。きっと。

そうだよね。仕事はやっぱりね、圧倒的に上位にいなきゃまずいんじゃないの?。
圧倒的上位というのは質的なものなんだけど、例えばね、コンプライアンスだよ。絶対、ある秩序もしくは法律でもいいんだけど、法律を守り、業界重視じゃなくてもいいんだけど、要するにお客様との約束ごとを守る。守りつつ、要するにさっきも言った最大の社会貢献。で、それを表すのは、最終的にあらわすのはやっぱり利益高になるんだと思うんだ。
これをある範囲の中で一番で行くと。ということだね。で、この最初のやつが蹴飛ばされるとちょっとアンフェアだよね。

そうですね。それがなくて利益だけでても。

そうそうアンフェアは良くないから。というのはあるね。で主に、過去もこれからも、アンフェアで一番問題になんのは、労働搾取じゃないの?今後ももちろん問題になんだけど、一番問題になんじゃないかな。そこが一番の最低守らないといけないんだね。そうしないと話がね、ご破算になる。そう思う。

会社は守らなきゃいけない人がたくさんいると思うんですけど、お客さんとの約束だったり、その従業員と従業員の家族だったり、あとは株主だったり、順番的にはどうですか?

えっと、全く同時じゃないの?
三方よしにしておかないと、どこいってもおかしくなっちゃうんじゃないの?それはバランス崩すのあんま難しいよね。ほんとは。できる範囲でもって絶対同時にしておかないと。なんかあったときに分配するときに急にさ、8:1:1にしちゃったりなんかするとだめじゃないの。なんかあったときには3分の1にするって風に考えておかないと。

私は、一番初めに入った会社がP&Gで、株主よりな感じが良くて入ったんですね。「わかりやすい!!」って。株式会社で株主優先ってわかりやすいなって。でも一方で従業員を先にやってくれる会社って働いてるほうとしてはいいなと思って、で、一の湯さんは、どういう順番なのかなっていうのが気になったんです。

全く、これはね、あんまり差をつけないほうがいいと思うよ。パイがちっちゃいと、3分の1じゃ、もらっても屁でもない。だからパイをでっかくするっていうことを、経営者はやんなきゃいけない。

今回は、晴也さんの真っ直ぐで飾らない、周りから愛されるお人柄と、経営者としての従業員様への責任感、そして奥底にある「負けず嫌い」を感じさせていただきました。その場限りではない、継続してきたものを守り承継していく方の考え方を知ることができ、貴重な機会となりました。

次回は最終回「歩くことでしか見えてこないものもある」です。窮地に陥ったときにも、歩くことで見えてくるものがある、そんなお話をお聞きします。お楽しみに!

#1 はんこを押してリスクを背負う、 それが俺の仕事だね。
#2 「社会的意義」をでっかくする、そのための「生産性」なんだ。
#3 人と体験から学ぶから、人付き合いが一番大事。
#4 「歩く」ことでしか、見えてこないものもある。