外国人新入社員に聞く「なぜ今、日本の会社で働く道を選んだのか?」

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外国人新入社員に聞く「なぜ今、日本の会社で働く道を選んだのか?」


“東洋の奇跡”と呼ばれたかつての姿は、残念ながら今の日本にはない。世界第二位の経済大国という座も明け渡し、グローバルというプラットフォームにおいて、「日本で働く」ということの経験は、今、世界の若者をどれだけ魅了できるのだろうか。
そんな中、ここにこの春日本企業への就職を決めた二人の若者がいる。なぜ日本を選んだのか?韓国人新入社員二人に、海外からみた“日本”という国、人、文化。“日本”から見た母国、人、文化について語ってもらった。

房 秀彬(バン スビン)
株式会社マテリアルHP:http://materialpr.jp/
-Profile-
ソウルで生まれ育ち、2011年の大学二年時に上智大学 国際教養学部へ編入。韓国へは戻らず、そのまま日本でビザを取ってPR事業を主としたマーケティングコミュニケーション業務全般を行う株式会社マテリアルへ入社。入社1年目ながら国内から海外まで幅広いPR業務に従事している。
金 東健(キム ドンゴン)
水上印刷株式会社HP:http://www.mic-p.com/
-Profile-
韓国籍ながら大阪で生まれ育ち、一度は韓国へと帰国するも両親の仕事の都合で約10年ぶりに再び日本へ。筑波大学 社会工学類を経て水上印刷に入社。現在は人材育成計画に基づいた「ジョブローテーション」にて社内の様々な業務に触れ、印刷への理解を深めている。

世界における日本の経済的存在感が薄まっている中、なぜ日本企業へ就職しようと思ったのか?

金: 房さんはなぜ日本の企業に就職しようと思ったのですか?

房: 私は韓国生まれでずっと韓国に住んでいて、今年で丁度3年目になりました。高校卒業してすぐ、韓国の大学に入学して日本語・日本文化学科に在籍していました。2年生の頃に、自分の環境を変えたいと思い、上智大学の国際教養学部に編入しました。編入を考えた時期がそろそろ就職の準備をしなくちゃいけない時期でした。なので日本に来た時から、日本での就職は念頭に置いていました。

金: 韓国は就活に凄く時間が掛かりますからね。

房: そう、下準備がすごく長いんですよ。なので日本で就職するのが一番良いんじゃないかって。後は2年で帰っちゃうのは少しもったいないなという気持ちもありまして、そういう感じで必然的に日本の企業に就職しました。
金さんはどうですか?

金: 私は生まれが大阪だったんです。父が留学で大阪の大学院に居たんですが、その際、私が生まれました。4年間を日本で過ごし、父が卒業して韓国に就職するときに、韓国に戻りました。戻ったというか、行った感じですね。それで、韓国で10年が過ぎた頃に、再び父の仕事の関係で日本に戻って来ました。
それから日本の高校へ進学して、迷ったのは韓国の大学に行くか日本の大学に行くか。理系だったのでそれなら日本の大学に行った方が良いんじゃないかっていう、親の勧めで日本の大学に進んだんですけど、その時に家族が韓国に戻ってしまったので、大学入学のときから一人暮らしを始めました。

房: 長く日本にいらっしゃるんですね。

金: そうですね、大学卒業時には10年近く日本で暮らしていたので、韓国人でありながら日本人の考え方とか想いとか行動が似てきているなと自分でも思うし、時々韓国に戻ったときも家族や友達にも「雰囲気から日本人に似ているな」と言われたりしました。

最近だと実家に帰ったときも帰った!というよりも別荘とか親戚の家に訪れるみたいな感覚だったので、完全に親から独立したなって感じました。そこから、もう独り立ちもしたし韓国で就職するより第二の故郷の日本で挑戦してみようと思い、日本の企業を探して就職しました。
世界における日本の経済的存在感は縮小していると感じますが、韓国と比べるとまだまだ日本のマーケットは大きいので、そういった点でも挑戦するならば日本かな、と。

今の会社を選んだ理由は?

金: 房さんはなぜ今の会社を選んだんですか?

房: うちの両親は娘に帰ってきてほしいので、「韓国の大手企業の日本支社とかの方が良いんじゃないの?」と言っていたんですね。ただ私はあんまり大手企業に興味がなく、むしろ規模にはこだわっていなかったので。やはり広告業界に行きたいと思い、業界を結構絞ってそれを中心に就活していました。

最初は外資系企業を中心にさがしたのですが、外資系のPR会社は新卒をとらないんですよ。それで悩んだのですが、大手企業はちょっと堅いとか保守的とか日本のやり方に全部合わせなきゃいけないという勝手なイメージがありました。なので、ベンチャーや小規模で、良い意味でルールにとらわれない、早くから活躍できる会社を中心に就職活動をしていたら、今の会社に至りました。
今の会社は広告ではなくPRをやっているんですけど、学生時代他業界の外資系企業でインターンをしていて、そこで広報部(PR)に配属されたんです。その時のマネージャーがとてもよくて、「この仕事面白いな」って思いました。

やっぱり就職を考えてしまうと、どれくらい日本に居られるのかを考えます。
自分で決めた線は2020年の東京オリンピック。「広告業界、PR業界盛り上がるなぁ」というのがありまして、日本で今の時期から働き始めて5年なら結構面白い仕事ができる状態になってるんじゃないか、なっていればいいなと。就活している中で出会った今の会社で面接を受けて、ここの社風と合うと思い入社を決めました。

金: ちなみに広告・PRで作ってみたいまたは携わってみたい業界はありますか?
化粧品とかスポーツ関係がいいのか。将来的にどういうものが作りたい等ありますか?

房: 新人ながら深く参加している案件があるんですが、旅行や宿泊の業界の会社です。その業界は今後面白くなっていくのではないかと思います。それと韓国企業で日本進出を目指している企業があれば携わってみたいです。例えば、好きなカフェが日本に出店する際は、ぜひPRを担当してみたいですね。

金: 最近のテレビで見たPRや広告の中で一番面白いとおもったのは?いままでで印象に残ったもの等ありますか?

房: 世界的に最近面白いなと思ったのは、ハンバーガーフランチャイズが出しているPR施策などですね。すごいな、と感動します。少し古いので言うとアイスバケットとか。自発的に世界中に広がったというところがあるので、これは面白いなっていうところがあります。
金さんはどうして今の会社を選んだのですか?

金: 韓国は主に財閥系の企業がシェアを占めていて、学生たちもそこを中心的に就職活動しているんですけど、日本だと中小・中堅企業層が厚い。私も大企業じゃなくて中堅で見ていたので。且つ、自分にとって色々経験させてくれる会社を探していたんです。

そうしたらたまたま水上印刷に出会って、70周年を迎えた会社なのに社員の平均年齢は低くて。若い人たちの集まりだから風通しもよさそうなイメージもあったし、「これからは若い人がチャレンジしていくだろうな」と思って、私も色々チャレンジできそうだし面白そうだなと思って選びました。
入社してからは印刷や色に関して興味を持ち始めましたね。

写真:日本企業への就職

韓国と日本企業の違いは?

房: 韓国企業に就職した経験が無いので、肌感覚や周りが言っていることになってしまうんですけど。私の周りの友達は結構公務員志望が多くて、普通の企業志望はすくないです。韓国と日本の企業の微妙な違いを言うと、日本のほうが安全主義。丁寧って言ったら丁寧なんですけど、心配性な気がしていて。国民性が出ているなと思います。

あと採用段階から思ったことは、韓国企業は語学力とか資格とか、学校のGPAなどのスペックを見るんですよ。でも日本企業は意外とその部分を見てないですね。質問も「学生時代に一番力を入れたこと」とかで。それを考えると韓国と日本の企業は人を採用する時に求めている物が違うな、と思いました。そこから企業文化の違いが生まれるんじゃないですかね?

金: 私も房さんと考えが似ています。日本の企業はマニュアル化されているので、型を作ろうとしているイメージがあるんですね。それが良い時と悪い時があって、良いのはなにかあってもマニュアルに従えばなんとかなる。でも逆にマニュアル以外のことが起こったらどうしようって戸惑ってしまうので、応用を利かせるのも重要。
それと、韓国は国土が狭いし、人口も少ないので国内より世界に発信しようとする動きが活発なんですけど、日本は国内市場が大きいのでそこまでグローバル化しようっていう動きが進んでいないと思います。

房: そうですね。韓国はグローバル化しないと生き残れないからというのもありますね。

金: なので韓国企業は採用時に語学力のスペックを見るんです。企業が「グローバル化したい」って言うなら英語力を磨く必要があるし、頑張って勉強してスペックを高くする。そういう傾向があるので、スペック重視で人柄が隠れてしまっているように見えるのが韓国の事情かなって、イメージです。

房: 私が在籍していた韓国の大学はめちゃくちゃ頭が良い大学でもなかったのに、卒業するためのTOEICの最低ラインが700点ぐらいでした。日本だと結構高得点になるじゃないですか。でも韓国だとその点数を越えなきゃ卒業できないところがあります。企業が求めるスペックに達しないと。そういうところは違いを感じますね。

金: 飲み会の文化が自由だなと。参加しなくてもそれが不利益にはならないし、強制的じゃないのが良いなって思います。
韓国では不利益になっちゃうことがあるので、飲み会があれば嫌でも何時に終わるかわからなくても行かなきゃいけなかったりします。それが酷い会社なんかは「飲み会は絶対に9時には終わらせる」っていうルールが出来たりして。会社自体が辞令を出すほど韓国の飲み会文化は厳しかったですね。

あと日本の企業は意外とプライベートが守られているなというイメージがあります。韓国では面接の段階で女性に結婚の希望を聞くんです。それって結構プライベートじゃないですか。日本だとそれは完全にアウト。そういう面で見ると守られているなって思いました。男なので面接時に結婚の希望を聞かれることについて「別に言ってもいいんじゃないかな」って思っていたんですけど、日本で働きながらよくよく考えてみるとそれって不自然だなって思ったんですよ。先輩とかもあまり結婚観とか深掘りしてこないし追求してこないので。それが印象深かったし、「守られているな」って思いました。

房: 私は同期と遊ぶほうなので、プライベートと会社ってそんなに別かな?と思うと「そうでもないんじゃない?」となりますね。昨日の夜も同期とご飯を一緒に食べましたし(笑)うちの会社は平日結構忙しい日も多くて。仕事で一緒に切磋琢磨する時間も多く、そうなると自然と同期と仲良くなるじゃないですか。でもさっきの結婚話を聞くと、「ああ、そうだな」とも思っていて。
韓国の企業文化も変わってはいるんですけど、女性観の違いもありますので。日本の女の子は早く結婚して子供生んで、と望む子が多い気がしますが、韓国の子って割と少ないんですね。それが企業文化に反映されているかもしれないです。

写真:韓国と日本企業の違い

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